それは、一時の、とても・・とても幸せな時間でした。
家族5人で銭湯へ行ってきたのです。
5人揃っていくのは久しぶりのことでした。
今日は朝から一日、長男の引っ越しに忙しく、荷物を運んで買い物をしてと・・・
今夜から一人暮らしを始める息子の為に、夫婦してあれこれと動き回っていました。
やっと一段落したのが夕方のこと・・・
夕飯の仕度もどうかと思い、銭湯へ行こうかということになりました。
久しぶりの家族揃っての時間で、久しぶりの息子の背中を自分の肩越しに見ながら
「大きくなったな」と・・・
あんなに小さかったのに、ついこの間、生まれたての赤ちゃんとして私が風呂に入れて
手を引いて遊園地に行って、自転車の後ろを押して練習して、野球の練習を応援して
中学になっても下手くそなのに野球の練習を続ける息子を、フェンス越しに見に行って・・・
無理して高専を受験させて、それでも頑張って合格してくれた坊主・・・。
初日に電車に乗り遅れて、オロオロして電話してきたっけか・・・。
5年間、レベルの高い授業を受けて大変だったと思うのに、黙々と頑張ってくれた。
いい父親じゃなかったよな。
ごめんな。
もっともっと優しくしてやれたはず。
寂しい思いをしていたことも幾度もあったんだろうな・・・・ごめんな。
就職を決めてきて、仕事始めてしばらくしてから
「仕事が辛くて・・・」と、初めて泣き言を言ったっけか。
そんなお前が、一人暮らしをしたいなんて・・・お父さん、どうしたのかと驚いたんだよ。
鏡越しに見えたお前の背中は、結構立派に見えたよ。
いつの間にか大きくなって、一人歩きしたくなったんだろうか。
私が、出来なかったことを何でも良いからやってご覧。
そう思いながらも、子離れできていない自分がいて、鏡越しに涙ぐんでしまって何度も顔を拭いて誤魔化していた。
息子は親のものではない・・・一人の人間であり、自由な存在なのだと・・・自分に言い聞かせながらも
坊主の向こう側に、ちょうど坊主を連れて銭湯へ来始めた頃の、私たちの様な親子が見えていた。
あの頃も子供達に囲まれて幸せだった。
幸せすぎて、なにも気づかなかったけれど・・・・
そして、今日は、ひとときだけだったけれど、子供達に囲まれて、銭湯で一緒の時間を過ごせた。
とても幸せな一時だった。
今、息子がいなくなって、ガランとした部屋を見ていて不覚にもまた涙ぐんでしまいました。
私は弱い父親ですね。
別にもう会えない訳でもないのに・・・。
しかし、我が子が巣立っていくという心境はこんなものなのだろうかと・・・そう思いました。
坊主、大きく立派になった。
まだまだ。これから大変だとは思うけれど、初めての一人暮らし・・・頑張ってみろな。