ずっと、このトンボのことを「カゲロウ」なんだと思ってた。
ハグロトンボ(羽黒蜻蛉)らしいから、間違いではないのかな。
7年前、Mさんの葬儀の時に見てから
ハグロトンボと呼ぶんだと知った。
別名「神様トンボ」と呼ばれるらしい。
お盆のあたりに見かけるトンボなので
「ご先祖様を送り迎えする使い」と思われたらしい。
特に、とまっているときにゆっくりと羽を開いたり閉じたりする姿が
まるで手招いているように見えるかららしい。
このトンボが、Mさんの葬儀の時に家の外にいた私の傍らから、
ずいぶん長い間離れなかったのを思い出す。
あまりに長い間近くを飛んでいるので、Mさんの息子さんを呼んで
ほら、珍しいだろと言おうとしたら、もういなくなっていた…。
八月の初めだったから暑かったと思うのだけれど、なにか時間のとまったような
暑さも覚えていない変な感覚の記憶です。
Mさん、何か言いたかったのかな。
ごめんね、寂しかったんだろうにちっともわかってあげられなくて。
助けてもらってばっかりで、何も恩返しができなかった。
自分のことで手いっぱいで、貴方のことまで考えている余裕がなかったのか…
そんなことは無かったんだろうけど…もう少し時間が欲しかった。
Mさん、私がリタイヤするまで待っててほしかったんだ。
本当は、一緒に九州行こうって言いたかったんです。
色んなこと、今一つ言えなくて、私の様なのがそんなこと言うと
Mさんに失礼だろうとか思ってしまって。
伝えていればよかった。
何も伝えないうちに…余計な諍いをしたままで貴方は逝ってしまいました。
「○○。おばちゃんのやってる店で良いから、連れてってくれんか」
そう言ってたね…いくらでも連れてってあげたかったんだ。
ただね、酒飲むと家に帰ってから暴れると聞いてしまったから…
ごめんね、一度くらいは連れて行けばよかった。
後悔…それ以外何もありません。
ずっと貴方の後ろを歩いてこれたことが幸せでした。
ありがとうございます。
あれから、もう七年も経つのですね。
今年、Mさんの七回忌らしいです。
あれから、一度もハグロトンボを見ることはありませんでした。
あの日、あんなに私の近くを飛び続けていたのにね…。
Mさん、今年はなに持って行こうか…。