むかし話といっても、そんなに古い話ではなく
私が経験したある出来事というか、人物についての話。
だから固有名詞は避けたいと思う。
何年前になるのだろう、ある歯科医師と知り合いになった。
最初は、こころ優しい人なんだろうと感じていた。
ただ、彼の父親との親子関係は良くない様で、母親にDVがあったことなど
色々と不満があったようだった。
ただ、このころ知り合った別の人物もそんなだったのだが、父親の世話になったということは欠片も思いたくない様で
大学も自分ひとりの力で出たのだと言い張っていた。
高校を出たときにとある人が援助をしてくれて、歯学部をに進むことができたと
そんな話をしていたのを覚えている。
よく考えてみれば、高校生にそんな投資をしてくれるあしなが伯父さん的なことが
都合よく起きるはずがないのだけれど…
仲の良くない父親の世話になったと言いたくなかったのだろうか。
彼は良く
「町医者になりたいんです。」
「周りの皆さんに頼りにされるような町医者になりたいんです」と話していた。
また
「自分が偉そうに外車に乗るようになったら、あいつは人間が腐ったと思ってください」とも話していた…。
彼は行く先々で「自分は医者である」と自己紹介して回っていたようで
飲み屋などへ行くたびに
「あ、○○先生いらっしゃい」と言われて機嫌を良くしていた。
とかと、二人で飲みに行くと、
「お金が無いのでスーパーの見切り品の総菜を買ってきて奥さんと二人で食べている」という話をしていたので、私が支払うことも多かったのだけれど、○○先生と呼ばれる人に奢るほど私はお金持ちではないのである(´;ω;`)
ある時、彼は英国の某外車に乗り換えていた。
奥さんの実家がお金持ちで、義父がくれたのだと話していたが。
なんだか言い訳がましく聞こえたのは気のせいか。
しばらくして、彼は株式投資を始めたらしく、私にも小遣い稼ぎになるから
やってみないかと勧められたことがある。
最初のうちは景気の良い話ばかりしていたのだけれど、なんだか医業の方が
おろそかになってきた感じというのか、医院に姿が見えないことが多くなった。
自分の部屋にこもって、PCの画面、つまり株式のチャートとにらめっこしている模様。
弱り目に祟り目というのか、それまで愛想の良い事務員さんとかスタッフがいて
評判が良かったのだけれど、派遣の衛生士とかを雇うようになったのか
ものすごく対応の良くないことが多くなっていった。
彼自身が治療現場に出ずに衛生士に任せてしまうことが多くなったせいか
ぞんざいな対応をするスタッフが出てきて、患者(私)の口にフックをひっかけたままで
器械を取ろうとしているのか、頬っぺたを引っ張られて、まるでドリフターズの
コントのようになって、思わず「痛いじゃないか」と文句を言ってしまったこともあったが、彼は、そのことを聞いていないのか、全く改善の兆しが感がられなかった。
それからしばらくして、彼の車がまた新しくなっていた。
ジャガーだったかな…
新車買ったの! すごいね。と言ったら
LARKの懸賞で当たったのだと・・・マジっすか(俄かには信じられなかったけど)
しばらくして、彼はもの凄い速度違反をしたんだとかで、免停になったと話していた。
どうやら、彼はMDPの傾向があるように感じられた。
彼のPCの調子がおかしいから、今すぐに見に来て欲しいと電話してきて
土曜だったので、今やっている仕事が終わったら午後からなら行けると答えたら
そのまま電話が切れて、午後に確認の電話をしたら
「もう直ったからいい」と…
「そんなら連絡して来いよ」と、ムッと来たのを覚えているが
そのあと連絡もなく、その頃には、彼と飲みに行くことも無くなっていた気がする。
そんな年の4月頃だった気がするが、しばらく休診と医院の玄関に
張り紙がしてあったので、LINEでどうしたのと尋ねてみたら、体調を崩して入院しているのだという。
連休明けに診療を再開するような話をしていたので、無理しない方がいいんじゃないのかと言った気がする。
心配している様子のメッセージが帰ってきたので、大丈夫だからしっかり治療した方がいいと返したのを覚えている。
その後、5月のことだったと思う。
医院の玄関の自動ドアに、裁判所差押え公示が貼り出されていたのを見て驚いた。
そう言えば、娘の進学の時に議員に話をして欲しいなら300万は必要だろうと
言われたのを覚えている。
今どきの県会議員が進学の口利き程度で300万も要求してくるはずはないらしいから
彼はその頃金に詰まっていたんだろうと思う。
おそらく、300万円は彼が欲しかった金なんだろうな…
だとしたら、悲しい話だ。
彼の委員の近くに、別の歯科医院ができて、なんだか焦っていたのを覚えている。
しかし、何年も先に開業していて評判も良かったのだから、ボチボチと
真面目に経営を続けていれば問題はなかった思うんだが…。
その言葉とは裏腹に、偉そうに医師であることをひけらかしたかったのは
彼自身だったんではないのだろうか…
いずれにしても、彼とは色々話をしてきた気がするが、何がどこまで本当だったのか
どこからが背伸びをした話だったのか…
ひょっとしたら、殆どが背伸びの結果だったのかと。
「身の丈で、背伸びなんかせずに生きていけばいいじゃないか」…
そう思える私は幸せなのかもしれない。