爺さんは、私のことを疑う気持ちが消えないようだ。
前に、年金の手続きのことで通帳をしばらく預かったのを
なんだか根に持っているみたいで、自分の金をネコババしようとしたと
思い込んでいる様子。
判子も無いのに通帳だけで、どうやって金を出すというのか。
そんなことも考えられないほど呆けているのだろうが。
研治のことも判らなくなっているようだし、そんな年寄りのいうことを
いちいち気にしなくて良いと、周囲の人間は思うんだろうけど・・・・
自分には、そう思うことは難しい。
幼い頃に一緒にいられなかったから、少しでもと思って病院を辞めて
家の仕事を継ぐことにしたのだけれど、今となっては
それが正しいことだったのかどうか、判らない状態でいる。
父の会社は父に最後までやらせておいて、経営がうまくいかなければ
父が自分で判断して閉じれば良かっただけのことなのだから
ただ、無理に足掻いて、会社を閉じることをかたくなに拒否したようにも
思えるんだが・・・
結局、我が家は、借金で大変なことになっていたかも知れないし。
今のこの状態が、選択肢としてベストだったのかも知れないが
そのせいで、
「俺の会社を継がせてやっているんだ」
「全て、俺のおかげでうまくいっているんだ」と
そんな考えなのかも知れない。
呆けた老人の頭の中を、まともに相手している自分が滑稽なのかも知れないが
どうしようも無い感情が沸いてしまう。
下手に、こうしてきたんだからとか思わないようにした方が良いんだろう。
距離を置いて、淡々と相手していくしか無いんだろうと思う。
親子では無くて、ただのぼけ老人の相手をしているんだ程度の考えで
接していく方が腹も立たないだろうし、感情的にならずにすむ。
いつまで続くのか判らないが、そうしていくので今のところベストなんだろうな。